下腿静脈瘤(足の静脈瘤)
人間は立位歩行しているため、下肢に流れた血液は重力に逆らって心臓に戻ります。青壮年期は、下肢の筋肉や結合組織も豊富で、静脈の弁の機能も十分働くため血液は逆流せず、下肢にたまることなく心臓に戻ります。しかし、年齢と共に血管周囲の結合組織は萎縮し、逆流を防ぐ静脈の弁の機能も低下するため、血液が円滑に心臓に戻ること妨げられるようになります。さらに、立ち仕事、正座、あるいは椅子にすわっている時間が長い、といった仕事に長期間従事するという条件が加わると、血液が下肢に溜まりがちになり、うっ血が進行します。そして下腿から大腿にかけての皮膚表面の静脈が怒張、蛇行するようになります。これを静脈瘤といいます。静脈瘤が出来てしまうと血液の流れがよどみ、血管に炎症が起きるだけでなく、血液が凝固しやすくなり血栓をつくる原因にもなります。皮膚では、毛細血管のような細い血管での循環不全を生じ、その結果皮膚の炎症を起こしたり(うっ滞性皮膚炎といいます。)、ひどい場合には潰瘍をつくることもあります。こうした病変は、とくに下腿の下方1/3によく見られます。
スキンケア
下腿に血液がたまることが原因ですから、少しでも血液を心臓に戻すようにすることが大切です。皮膚の炎症や潰瘍が認められない場合には、起きているときは下肢を軽く圧迫包帯するのが効果的です。また寝るときには、下肢の下全体に布団1、2枚程度余分に敷いて寝ましょう。長時間椅子にすわったまま仕事をする場合は、前に椅子を置いて足を乗せ、少しでも足を高くしましょう。足の指でグーパーを繰り返す運動をしたり、足を上下につま先立ちする、つま先を上にするなどの運動で筋肉を収縮させてください。筋肉がポンプの役割をして、うっ血を改善します。ふくらはぎを軽くマッサージするのも効果があります。長時間、立ち仕事をする場合にも、つま先立ちするなどの運動が効果的です。足のだるさを感じたら、短時間でも布団を1、2枚程度下肢の下に敷いて、足を心臓より高くなるようにしながら横になりましょう。ところで、静脈瘤があるという理由だけで、安静にしていなければならないわけではありません。過度の負担にならなければ、散歩や水泳は構いません。肥満は静脈瘤を悪化させますから減量に取り組みましょう。なお、皮膚の病変は静脈瘤が原因で生じることが多いので、皮膚の炎症や潰瘍を再発を繰り返す場合には、静脈瘤を固めてしまったり(硬化療法)、外科的に除去する方法があります。(当院においては手術、硬化療法、弾性ストッキングはおこなっておりません。)