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東大阪市西石切町にある皮膚科クリニック

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疥癬

疥癬(ノルウェー疥癬・角化型疥癬)

疥癬とはヒゼンダニ(体長約0.2~0.4mm )という小型のダニが皮膚に寄生する病気です。しかし、ヒゼンダニは通常の虫刺れのように、人間を刺して血を吸ったりするわけではありません。人間の皮膚を生活の場にしています。したがって、布団や畳の中で増えることもありません。最近では、高齢者施設を中心に流行し、在宅の老人にも広がりをみせ、問題となっています。

ヒゼンダニのライフサイクル

ヒゼンダニが人に寄生すると、皮膚の表面を活発に動き回ります。受胎したメスは産卵のため、表皮の角層内(アカとなって剥がれ落ちる部分)に「疥癬トンネル」という横穴を掘って、そこで卵を生み続けます。ヒゼンダニは高温、乾燥に弱く、50℃、10分で死滅します。また人の皮膚から離れると長くは生きられず、感染力が低下します。卵は通常3日から4日でふ化します。免疫力の低下した高齢者などは、ヒゼンダニにとって格好の繁殖場所となります。疥癬は寄生するヒゼンダニの数によって「普通疥癬」と「角化型疥癬(ノルウェー疥癬ともいいます。)」の2つに分類されます。同じヒゼンダニが原因であるにもかかわらずこのように分類するのは、人への感染力が両者で全く異なるからです。

「普通疥癬」ではヒゼンダニの数がせいぜい1000匹程度(50%の人は1人あたりに寄生するヒゼンダニは5匹以下といわれます。)なのに対し、角化型疥癬では100万~200万匹と桁違いに増加しています。ですから「角化型疥癬」では、直接接触しなくても、アカとともに多くのダニや卵が撒き散らされるため、感染性が非常に強く、厳重な対策が必要です。

皮膚に見られる症状

疥癬で見られる皮膚の症状には「赤いブツブツ」と「疥癬トンネル」があります。「普通疥癬」では、感染して1ヵ月ほどの潜伏期を経て「赤いブツブツ」が胸やヘソのまわり、両脇、太ももの内側にできます。また陰嚢や外陰部にコリコリした小さな結節も特徴的です(疥癬患者の7%に見られます。)。この「赤いブツブツ」は刺し傷ではなく、ヒゼンダニやその抜け殻、糞に対するアレルギーで出ているといわれます。この点が、通常の虫刺れと異なるところで、誤解を招くところです。潜伏期があるのは、虫体や虫卵、抜け殻、糞へのアレルギーが成立するまでに時間がかかるため、と考えられています。「疥癬トンネル」は疥癬に最も特徴的で、診断の決め手となる重要な皮膚症状です。線状の少し盛り上がった皮疹で、手のひらや指の間に見られます。手に線状の皮疹や水疱があれば、疥癬を念頭におく必要があります。「赤いブツブツ」や「疥癬トンネル」は強いかゆみを訴えることが一般的です。

一方「角化型疥癬」とはヒゼンダニが急激に増加し、角質化した皮膚が赤くなって、カキの殻状になり、フケが飛び散るタイプをいいます。ただし、いきなり「角化型疥癬」の形で発生することは少なく、「普通疥癬」が悪化して「角化型疥癬」に移行することが多いです。「角化型疥癬」の場合も、痒みを伴いますが、必ずしも痒みを訴えない場合もありますので注意が必要です。手や指がガサガサしていたり、厚いアカがこびりついていたりしたら注意してください。

疥癬対策および治療の実際

はじめに

この項で挙げる軟膏とは10%イオウサリチル酸チアントールとオイラックス軟膏を等量混合したものです。この軟膏には医師の処方箋が必要です。

処置の体制

まず第一に、疥癬患者の皮膚に軟膏処置を行い、ヒゼンダニの数を減らすことに集中してください。寝具や病室の消毒や掃除は、二番目の問題です。衣類、リネン、タオル、バスタオルの共有は厳禁です。

入浴、清拭

「普通疥癬」でも「角化型疥癬」でも全身状態が許す限り、通常どおり入浴してください。もちろん、入浴の順序は一番最後です。早く治そうとするあまり、皮膚を強く擦ってしまいがちです。強く擦る必要はありません。刺激の少ない石鹸を用い、自分の体を洗う半分位の力で優しく洗ってあげましょう。イオウの入った入浴剤(六十〇ハップ)は、皮膚に対する刺激が強く、また皮膚の乾燥を悪化させるため、使わないで下さい。

軟膏処置の方法

1日1回、軟膏を塗ってください。ヒゼンダニは皮膚の表面を自由に活動しているわけですから、皮疹の有無、薬の種類にかかわらず、全身くまなく薬を塗ることが原則です。ブツブツの出ているところだけ塗っても、効果がありません。なお「普通疥癬」では必要ありませんが、「角化型疥癬」では頭部、顔面も含めて軟膏処置しなくてはいけません。

処置の期間

まず、5日間(卵がふ化するのに必要な期間を考え、5日間を1クール(処置期間)とします。)軟膏処置を行ってください。経過を見ながら処置を続けることになります。ただ、実際には、処置をしてヒゼンダニが認められなくなっても皮膚症状が何ヵ月も消えないこともあります。高齢者では何ヵ月もたってから、疥癬が再燃することもあります。これは、疥癬の皮膚症状が主にアレルギー症状によって出るもので、ダニに刺されたから皮膚症状が出るわけではないこと、ブツブツのあるところに必ずしもダニがいるとは限らないこと、寄生するダニの数とかゆみの程度が比例しないことなどが理由です。疥癬の治癒とはヒゼンダニが死滅することで、後に残る痒みや皮疹は後遺症と考えてください。痒がるからといって漫然と殺ダニ剤(オイラックス軟膏)処置を漫然と続けないでください。「普通疥癬」であれば感染性は低いわけですから、定期的に皮膚の状態を観察し、症状が再び出たときには、状況に応じた処置を冷静に行うことが大切です。過剰な対応はスタッフの過労を招き、かえって感染症対策をおろそかにしてしまいます。

「普通疥癬」への対応

「普通疥癬」では長時間の濃厚な接触がない限り、それほど感染性が高くありませんので、角化型疥癬のような厳重な対策は必要ありません。ただし、疥癬の皮疹が出るまでには1ヵ月の潜伏期があるため、感染が疑われたときには皮膚にブツブツが出ていなくても予防的な治療が必要です。大切なことは「普通疥癬」を不適切な処置(ステロイド外用剤を使うなど)で、「角化型疥癬」にしないことです。

軟膏処置

まず、軟膏処置を1クール、5日間続けて下さい。頸部から下の全身に塗ってください。特に手の指の間、足の指の間、爪、耳の処置を忘れないでください。「普通疥癬」では1クールの処置でダニの死滅には充分なこともありますが、高齢者では「普通疥癬」でも3~4クール必要なこともあります。充分な経過観察が必要です。

隔離

必要ありません。治療を開始すれば、皮疹はひどくてもヒゼンダニの数は減少しますし、皮疹や症状がないからといって、ヒゼンダニがいない、とは言えないからです。ただし、疥癬が疑われる人が、畳の上での雑魚寝したり、徘徊する場合は、そのフロア全体の予防的治療が必要です。

手洗い

通常の手洗いで構いません。

病室、ベッドの消毒

ヒゼンダニは人の皮膚から離れると、感染性を失います。したがって、病室の特別な殺虫剤の撒布や消毒は不要です。患者さんの軟膏処置にのみ専念してください。通常の掃除、拭き掃除を行ってください。

リネン、シーツ、衣類の消毒

シーツ交換は通常通り行ってください。特別な消毒は必要ありません。できれば布団は天日干しし、掃除機をかけてください。寝具やタオルを介して感染することがありますから、共有してはいけません。

「角化型疥癬」への対応

一刻も早く感染源となった患者を特定し、隔離した上で、治療を開始してヒゼンダニの数を減らして、他の人への感染を抑えることが大切です。通常、皮膚症状が重篤な患者(「角化型疥癬」)が感染源です。

軟膏処置

1日1回軟膏を塗ってください。「角化型疥癬」では頭、顔面、頸部をふくめて全身に塗らなければなりません。経過を見ながら1クール5日間の軟膏処置を、数クール繰り返すことが必要です。また爪にヒゼンダニが入ってしまい、分厚い爪になることがあります。爪切りはしっかりして、塗り薬を忘れず塗布しましょう。なお爪を切るときは、爪を飛ばさないように、ビニール袋の中で処置するなどの注意が必要です。

入浴

入浴は最後です。入浴後、風呂場は熱湯を流した後、洗剤やブラシで洗浄してください。脱衣場はピレスロイド系殺虫剤を噴霧し、掃除機をかけ「角化型疥癬」の場合は、衣類は専用のバケツにいれ、熱湯で消毒してください。

隔離

個室にベッド、寝具ごと隔離してください。隔離期間は治療開始1~2週間で充分です。「角化型疥癬」患者が複数のときは一つの部屋に収容し、処置をしてください。ヒゼンダニが死滅するまで面会は禁止です。また不必要な患者の移動も止めてください。

ガウンテクニック、手洗い

ガウンテクニックが必要です。処置をする人も爪は丸く切り、使い捨て手袋を使用し、手拭きはペーパータオルで行ってください。患者ケアの前後で、通常の石鹸で丁寧に洗ってください。アルコールをはじめとする消毒薬は不要です。隔離室の立ち入りには予防衣、手袋を着用し、スリッパに履きかえてください。予防衣は熱湯消毒してください。

病室、ベッド、介護用品、脱衣場の掃除

毎日、掃除してください。角化型疥癬では、アカとともに大量のヒゼンダニや虫卵が拡散します。殺虫剤を使うのであれば、ピレスロイド系殺虫剤が人体に対する影響が最も少なく、殺ダニ効果も強いものとして推奨されています。これが使えない場合は、熱湯で消毒をしてください。ピレスロイド系殺虫剤を噴霧したあと、 1~2時間後掃除機で吸引してください。掃除は循環式の掃除機がおすすめです。殺虫剤撒布は隔離開始日と隔離終了日の計2回行えば充分です。余裕があれば、疥癬患者が隔離前にいた部屋も同様の処置を行ってください。なお余裕があれば14日間使用しないほうがよいでしょう。外の業者に消毒を依頼する場合は、集配業者への二次感染予防のため、袋に「角化型疥癬」患者のものとわかるように、はっきりと表示してください。さらに袋の中に殺虫剤を撒布してあげてください。

リネン、シーツ、衣類、こたつ布団

毎日、一斉に交換してください。交換したリネン類は、ほかの洗濯物とは区別して、ビニール袋にいれ、ピレスロイド系エアゾールを噴霧し密封してください。または熱湯に10分以上浸してください。外の業者に出せるものは出して、加熱消毒するように依頼してください。

掃除

モップや雑巾を使うときは洗剤を用い、使用後は熱湯で10分以上で消毒、天日干ししてください。バケツ等も熱処理し、乾燥保管してください。

現在、疥癬に対しては、チアントールに保険適用が認められています。またアルコール、次亜塩素酸によるヒゼンダニ殺虫効果は確認されたものではありません。疥癬は早期発見、早期治療が重要です。疑われたら皮膚科を受診してください。

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